ウクライナがアメリカの停戦案に合意   
 アメリカは12日にロシアと接触へ
 ロシアの対応が今後の世界を左右する

 サウジアラビアのジッダでアメリカとウクライナの高官協議が行われた。
 アメリカはルビオ国務長官とウォルツ大統領補佐官、ウクライナはイエルマク大統領府長官とシビハ外相、ウメロフ国防相が出席。

 ゼレンスキー大統領によるとアメリカの提案は
「即時かつ延長可能な30日間の停戦。延長も可能」
「黒海だけでなく前線全体でミサイル、ドローン、爆弾による攻撃を停止する完全な暫定停戦」


 さらに両国は
 ウクライナへのアメリカの「軍事支援」と「情報提供」の再開でも合意した。

【解説】
 ゼレンスキー大統領は6日に自らの停戦案を明らかにしていた。それは
「エネルギーやその他の民間インフラへの攻撃停止、ミサイル、爆弾、長距離の無人機の停戦」と「黒海での軍事作戦の停止」
というものだった。「実施と監視が容易だから」と理由を挙げていた。そして短期間の停戦は「ロシア軍に再攻撃までの体制を整える時間を与えるだけ」と反対していた。

 戦況はロシアに有利に

 ゼレンスキー案に比べてアメリカ案は「前線全体」という、より広範囲な停戦となっている。
 この案で早期に合意した背景には、アメリカがウクライナへの軍事支援と情報提供を停止して以降、ロシアが攻勢に出ていることがある。ウクライナでの支配地域を広げるとともに、ウクライナが支配していたロシア国内のクルスクにおいても急激に奪還を進めている。

 これにはウクライナはもちろんアメリカにも焦りの色が浮かんでいる。
 トランプ大統領は7日にロシアが攻勢に出ていることを非難し、ロシアへの追加制裁を検討していると明らかにしている。

 ルビオ国務長官はロシア側と12日に接触するとしていて、マイク・ウォルツ安保担当補佐官も近くロシアの大統領補佐官と会談、ウィトコフ大統領特使も今週モスクワを訪問しプーチン大統領と会談する。

 ロシアの反応は

 アメリカはハイペースで動いているが、この停戦にロシアがすぐに応じる可能性は低い。現在の戦況はロシアが押し込んでおり、ロシアには急がねばならない理由はないからだ。ロシア側はアメリカと協議する姿勢を示している。当面、「協議」には応じながら戦闘を続けてさらにウクライナ軍を押し込んでいこうとするだろう。

 プーチン大統領はアメリカに対して、ロシアに有利な条件を強気に要求できる立場にある。その難しい条件に対してどうするのか。じきにアメリカにボールが返ってくることになるだろう。そのボールはそのままゼレンスキー大統領に渡される可能性も十分ある。

 トランプ大統領のカードは

 トランプ氏は停戦に応じない場合は経済制裁を課し、ロシア経済に大きなダメージを与える、としている。しかし制裁へのロシア経済の耐性が高いことは既に証明されている。インドにロシアからのエネルギー輸入をやめさせるぐらいの画期的な腹案でもなければ容易ではない。その中でプーチン氏がトランプ氏との関係を敵対的にしたくない、と考えるであろうことは一つの望みだ。

 事態は動き出した。「ロシアにとって都合の良い停戦」に向かって

 ロシアが優位に立った交渉がが嫌ならさらなる犠牲を出しながら戦争を続けるしかない。そして状況を変えるにはアメリカかヨーロッパが大幅に軍事支援を増やすか、直接軍事介入するしかないが、世論がそれを許すはずはない。

 つまり、ロジカルに考えれば今の流れは自然だ。

 プーチン大統領はどんなボールを投げ返すのか。この反応はトランプ政権下の世界の構図を左右する重要なものになる。

投稿者 緒方遼

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