英紙フィナンシャル・タイムズが16日、ブリュッセルで開催される中国とEUの首脳会議への招待を習近平国家主席が断ったと報じた。李強首相が出席する。今年は中国とEUの外交関係樹立から50年となり、EUは習主席の出席を希望していた。
【解説】
この会議は通常、中国はブリュッセルで行うときは首相が出席し、北京で行うときは主席が出席する慣例だった。しかし、今年習主席が辞退したことは重要な意味を持っている。ヨーロッパの懐柔に血道を上げていた中国がそれを諦めたサインだと受け取れるからだ。
去年は欧州に猛烈にアプローチ
中国は昨年、ヨーロッパに対して非常に活発な外交活動を行った。1月の李強首相のスイス、アイルランド訪問を皮切りに、2月には王毅外相がドイツ 、スペイン、フランスを訪問。3月にはオランダ、スペイン、ドイツの首脳が訪中し、5月には習主席がフランス、ハンガリー、セルビアを訪問。かつてない勢いでヨーロッパへの接近を図った。
背景にはアメリカの中国への強行姿勢が変わりそうもないことがある。
トランプ政権に続いてバイデン政権も中国への厳しい姿勢は一貫していた。もちろん、大統領を含め高官たちが非常に厳しい対中観を持っていることがあるがそれだけではない。実は当初、ウェンディ・シャーマン国務副長官は中国への圧力を弱めようとしたのだが議会で問題となり、以後、「中国に甘い」
と受け止められるような言動は誰も取ろうとはしなくなった。
この議会の姿勢がある限り、アメリカは当面変わりそうにない。そこで中国は、ヨーロッパの中でアメリカと距離感のある国を回り切り崩そうと目論んだのだ。
ヨーロッパの対中警戒感が決定的に
ヨーロッパでは2016年から徐々に中国への警戒感の水位が上がりつづけていた。そこへ大きな要因が加わった。ロシアのウクライナ侵攻だ。ヨーロッパにとっては目の前の大きな脅威で、そのロシアを中国が支援していることは絶対に受け入れることはできない。そこを狙って日本やアメリカは「中国を警戒すべし」とヨーロッパに説き続けた。結果、中国の努力も虚しく、ヨーロッパの中国への警戒感は決定的となったのだ。
それは行動となって現れている。各国の軍の官邸が台湾海峡を通過する動きが相次いでいる。
2023年4月にフランス、2024年5月にオランダ、7月カナダが、そして9月にはドイツが22年ぶりに、台湾海峡を通過した。そして10月には中国製EVに対する関税が正式に決まった。
トランプ氏が再び大統領選で勝利したことでヨーロッパとの関係が悪化することが予想され、中国は一時期待を示していた。しかし、その後もヨーロッパの姿勢は変わっていない。むしろトランプ政権をヨーロッパに繋ぎ止めるためにヨーロッパがアジア太平洋の安全保障にもっと関わるべきだ、という主張が強まっている。これが日米とヨーロッパの国々による軍事演習が急増している理由だ。
出席しても得をしない
さらに、ヨーロッパではトランプ政権の姿勢を受けて、ロシアに対する危機感がさらに高まっている。それに伴って中国への目も厳しさを増している。この状況で習主席が首脳会議に出席しても四面楚歌になるだけで決して得をしない、そう考えたことは容易に想像できる。
キレ気味の中国
今年1月、欧州理事会のアントニオ・コスタ議長と州主席の初めての電話会談が行われた。
中国国営のCCTVはこれについて「習主席はEUが協力のための信頼できるパートナーになることを望んでいると述べた」と報じた。つまり現状は「信頼できない」と言っているのだ。首脳会談の報道としてはかなり辛辣で、厳しい関係性を隠そうともしていない。圧力をかけているつもりだろうが逆に関係が悪化していくだけだ。
コスタ氏も不満を隠さず
その証拠にコスタ氏は会談後「EUと中国は重要な貿易パートナーだ。両者の関係は均衡が取れ、公平な競争条件に基づいたものでなければならない」とXに投稿した。こちらも現状は「公平な競争になっていない」という意味だ。
市場の魅力と一帯一路の巨額の投資をテコに一時はヨーロッパがこぞって関係を強化した中国。しかし、戦狼外交とコロナウイルスの大きな被害、そしてウクライナに侵攻したロシアを支援するという数々の失敗を繰り返し、中国の対欧州外交は出口を見出すのが難しい状況に陥っている。
