1. トランプ大統領が ”イランが核開発の制限に合意しなければイランを「爆撃」か「二次関税」をかける”と発言 イランは反発

 トランプ大統領は30日、イランが核開発をめぐる協議で合意しない場合にはイランに対して爆撃や追加関税を実施する考えを示した。イランの最高指導者ハメネイ師は「もし彼らが悪事を働けば、必ず強烈な報復攻撃を受けるだろう」と反発した。

【解説】
・トランプ氏から3月上旬にハメネイ師に核交渉を呼びかける書簡
・30日にペゼシュキアン大統領が直接交渉の拒否を表明 間接交渉なら受ける姿勢
・イランは苦境にあり、歩み寄るはず、というトランプの計算


 トランプ氏は3月上旬にイランの最高指導者ハメネイ師に書簡をお送り、イランの核開発を制限する新たな合意に向けた交渉を呼びかけていた。これには大いに可能性がある。様々な好条件が重なっているからだ。

 イランの代理勢力であるハマスやレバノンのヒズボラ、シリアのアサド政権が次々と崩壊や壊滅的な打撃を受けている状態で、中東でのイランの影響力は大幅に縮小している。またイエメンのフーシ派に対してもアメリカが軍事攻撃を行い、さらに打撃を加えることは可能だと見せつけている。

 イランの大統領は去年7月の選挙で勝利した改革派のペゼシュキアン氏で、核合意の再構築を目指すと主張してきた。さらに今年2月、トランプ大統領がイランの後ろ盾だったロシアのプーチン大統領に直接イランとの交渉についての協力を求めると、ロシア政府の高官が相次いで協力姿勢を表明した。これはウクライナでの譲歩が難しいプーチン大統領がイランについては協力することでトランプ氏に貸しをつくろうというものだ。イランからするとハシゴを外された形だ。

 状況はトランプ氏に有利に進んでいるかに見えていた。そこに30日、ペゼシュキアン大統領が「アメリカと直接交渉はしない」とする一方「第三者が仲介する間接交渉には応じる」と表明した。苦しいイランがトランプ氏の要求を丸飲みしては国内で批判の声も上がる。「間接交渉なら・・・」というのは十分柔軟な姿勢だと感じたがトランプ大統領には通じなかったらしい。

 「さっさと直接交渉に応じろ!」と言わんばかりの強硬発言が飛び出した。
 しかし、全体としてイランは交渉に応じる姿勢である。トランプ氏が無茶をしてイランの国内世論を難しくしなければまだ十分可能性はある。当面、トランプ氏がやりすぎないか、イランがどこまで折れることができるか、綱引きに注目である。

2. トランプ大統領がプーチン大統領に「怒り」 ロシアに制裁も示唆 ロシアはなだめる


 アメリカのトランプ大統領が30日、NBCテレビに対して、米露間でウクライナの停戦合意ができずそれがロシアの責任だと判断した場合、ロシアの石油を購入した国からの輸入品に25〜50%の関税を課す「二次関税」を検討すると述べた。

 さらにプーチン大統領が、ウクライナのゼレンスキー大統領を排除して新たな指導者が必要だと述べたことについて、トランプ氏は「長期間にわたりディール成立がないことを意味する」として「頭に来ている」と述べた。

 これについてロシアのペスコフ報道官は「バイデン政権時代に大きく損なわれた二国間関係の構築に取り組んでいる。ウクライナを巡る問題の解決に向けたいくつかの構想の実現にも取り組んでいる」「プーチン大統領はトランプ氏との接触に引き続き前向きな意向を示している」と述べた。

【解説】
 このやりとりはウクライナをめぐるトランプ大統領とプーチン大統領の関係を浮き彫りにしている。
 それは「戦況はロシアが優勢で停戦交渉でもロシアが圧倒的に有利」だが、一方で「プーチン氏はトランプ大統領がとこかでキレてロシアに強硬な手段をとることを警戒している」 という構図だ。

 停戦を急ぐ必要がないロシアとの交渉を強引に始めようとしており、本来「停戦したい」というアメリカは圧倒的に不利だ。「それでもいいからとにかく早く停戦しろ」というのがトランプ大統領のこれまでの姿勢だ。今回キレているのも「早くしろ」という点であって交渉内容についてではない。

 しかし実際には制裁の一部解除を引き出そうとするロシアに対して、何ら見返りなく黒海での停戦を飲ませようとしている。そして条件をつけるロシアに苛立っている。さらにゼレンスキー大統領の排除を求めていることで「そんなことしようとしたら延々と時間がかかるだろう」とキレた、ということになる。

 興味深いのはそれに対するペスコフ報道官の発言で、明らかにトランプ大統領をなだめている。ロシア側は有利な状況をベースに高い要求を突きつけているだけで、交渉としては通常ありえることだ。しかしその「相場感」はトランプ大統領には通用しないようだ。そして思い通り進まないと何をするかわからない、と感じさせる。これこそがアメリカ側の強みだ。

 では「アメリカに何ができるのか」という疑問の答えの一つが今回の「二次関税」ということになる。ロシアは欧米の経済制裁と戦争の負担で疲弊してきているが、まだ限界ではない。それは中国とインドなどにエネルギーを売り続けているからだ。本当に高い二次関税を課せばその中国とインドに強烈なダメージとなり、ロシア産エネルギーの購入を控えることになるかもしれない。普通の米政権なら中国はともかくインドとの関係も悪化してしまうのでとても現実的ではない。しかしトランプ大統領ならあり得る、と考えてしまうのである。

 そうなると米露の立場が大きく変わってくる。一気にアメリカに急所を握られることになる。ペスコフ氏の反応は、そうならないように現状の構図のまま交渉を続けていきたいというロシア側の思惑が表れている。

 一方のトランプ大統領も現時点ではロシアと本気で構える気はない。ほどほどに互いを尊重する関係を維持したままウクライナ戦争を終わらせたいと考えている。そして台湾有事への備えに集中したいのだ。さらにプーチン大統領との良好な関係は停戦の実現や維持、イランとの核協議、さらには中国の孤立化にまでつなげられるはずだ、という期待がトランプ氏の頭にはある。トランプ政権の戦略の要になるのだろう。

 トランプ大統領にはプーチン大統領に対するさらなるカードも存在する。「ウクライナをNATOに加盟させるぞ」「ポーランドにアメリカの核を置くぞ」などといった通常なかなか考えにくい脅しだ。これが普通の米政権なら「そんなことできるわけない」と思われて終わりだが、トランプ大統領ならやりかねない、と思わせる怖さがある。そうしたカードをまだトランプ氏は隠し持っている。

 あまりに型破りなトランプ氏の言動は、一般にはネガティブに受け止められてきた。しかし、こうした角度から見れば大きな武器になっているのである。






投稿者 緒方遼

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です